THE COURTEENERS / ザ・コーティナーズ


 フジロック2008(土曜日)  GREEN STAGE


“待望の”という形容は、音楽業界ではかなり過剰に多用されている修飾語だ。しかしインターネット上で、人々がザ・コーティーナーズについて語り合っている幾つもの掲示板を少しばかり覗いてみれば、このバンドのデビュー作に関しては、それが正に的を射た表現であることがわかるにちがいない。彼らのファースト・アルバムのタイトル『セイント・ジュード』(※)とは、敗北者の守護聖人であり、フロントマンであるリアム・フレイが首にかけているネックレスの先に付いているイコンの名だ。“地方都市の地元のヒーロー”から、瞬く間に“国民的ニュース”の対象となった彼ら。傍目から見れば、出世街道を急速に駆け上がって来たバンドのように思えることだろう。

しかし実際、『NME』誌や『Q』誌、BBCレディオ1などから高い評価を得るようになった現在に至るまでの間、リアムが精力的にソロ・ギグを行ったり、またバンドを結成してからは昔ながらの草の根的なライヴ活動によってファンベースを築いてきたりと、彼らは地道な努力を積み上げてきたのである。正式なファースト・シングルのリリースに合わせて行われた、『マンチェスター・リッツ』や『ロンドン・キングス・カレッジ』でのソールドアウト公演で一つの絶頂を迎えたと思いきや、そのすぐ後に行った『マンチェスター・アカデミー』や世界的に有名な『ロンドン・アストリア』でのライヴがまた新たなハイライトとして記録されるなど、快進撃を続けている彼ら。ザ・コーティーナーズは常に、人々の心をストレートに鷲掴みするバンドであり続けている。ザ・コーティーナーズはライヴ・バンドだ。そして彼らは、ライヴ音楽には世界を変えることが出来るような力があると信じており、「ホワット・ユー・トゥック・ソー・ロング」や「ファロウフィールド・ヒルビリー」のような曲を通じて、自分達と同じ価値観を共有する人々を讃え、音楽を単なるファッション・アイテム的な地位に貶めている人々のことを厳しく非難している。彼らは髪型が売りのバンドなどでは“断じて”ない――彼らが実際、非常にオシャレなヘアスタイルをしていることは別として。

ザ・コーティーナーズのライヴは、オーディエンスの大合唱を巻き起すことで、UK音楽ファンの間では既に伝説となっている。これまでのギグでは、例えば荒々しくノイジーな「If It Wasn't For Me」やモータウン調の「Please Don't」などで、人々が一語一句違うことなく、その歌詞を憶えていることが判明。その2曲がレコーディング作品に収録されるのは、今回のアルバムが初めてにも関わらずだ。このことからも、ザ・コーティーナーズの熱心なファンにとっては歌詞の一語一句やその抑揚を憶えることは重要であり、必須だというのがわかる。その意味ではザ・スミスやストーン・ローゼズ、オアシスといった、同じマンチェスター出身の先輩バンド達と彼らが比較されるのは、当を得ていると言えよう。これはまた、リアムが“偉大なる作詞家”の卵であることの証拠だ。

『セイント・ジュード』でフレイの歌詞から一貫して滲み出ているのは、辛辣なまでの正直さと自嘲気味なユーモア。その片鱗は既に、「Cavorting」や「Acrylic」、「What Took You So Long?」といったシングルにも表れていた。会話体のリアリスティックな物語を巧みに綴る彼の才能は、確かにモリッシーを思い起こさせる。絶妙のタイミングで痛烈な言葉の棘を用いてチクリと刺すところなど特にそうだが、同時にまた、ジョン・クーパー・クラーク(※マンチェスター出身の“パンク詩人”)やジャーヴィス・コッカー(※元パルプ)らをも髣髴とさせる。今回のアルバムには、あの「Acrylic」ですら残念ながら収録されてはいないが、それはあまりにも良い曲が多過ぎて一枚のアルバムに収め切れなかったせいであり、またファンにできるだけ多くの新曲を聴いてもらいたいという意図もあってのこと。フレイのソングライティングと、ザ・コーティーナーズのギター、ベース、ドラムスとが融合したパワーが生み出す刺激的な楽曲は、まだまだ尽きることがない。

※)セイント・ジュード:タダイの聖ユダ使徒。聖タダイ(またはタデウス、ファディ)とも呼ばれる、使徒ユダのこと。新訳聖書に登場する、イエス・キリストの弟子(使徒)の一人。イエスを裏切ったことでよく知られる“イスカリオテのユダ”とは別人。西方では、“敗北者の守護聖人”と考えられている。

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